ジモトジマンコレクション

写真家・テラウチマサト氏のご講評

「1点1点の写真のうまさと、この街に行きたい!っていう気持ちにさせる表現力や技術力。あとは、フォトブックなのでページネーションとか表紙にどの写真を使うかが大切」

「人と歴史と四季のある町」

「緑とともに住む」

「SHINJUKU」

第3回ジモトジマンコレクションでは、この3作品についてご講評をいただきました。

「人と歴史と四季のある町」

人と歴史と四季のある町というタイトルに相応しい、堂々とした銅像の表紙からスタートしていて、この作品に期待感が持てました。

1個1個の写真の構図や配置バランスが非常によく、そして所々で巧妙に人物を入れてきているところが良かったです。

また、「人情あつい」、「野菜がおいしい」など、この町のいいところを地元住民の方々自身が黒板を使ってPRする写真を入れていたのは企画力を感じました。すごく面白かったです。

「緑とともに住む」

この作品も表紙が良かったです。

この町のマスコットキャラだと思いますが、“ぽん”と表紙に入ってきていて、すごく愛らしかったです。

そして表紙をめくると、ベテランのカメラマンが撮ったかのような風景が“ぽん”と来て。最初にこの写真が来たので、後半の写真の展開にちょっと意表を突かれました。

また、1枚1枚の写真の持っているパワーが強く、上手ですね。特に広角系が上手で、しっかりと指導を受けているのだろうと思いました。

「SHINJUKU」

これが1番良かった作品ですね。

まず、表紙がどこかの会社案内みたいで、かなりオシャレでインパクトがありました。

デザインもシンプルで綺麗。

作品のレイアウトに関しては、本当にうまく写真を生かしていると思います。縦に長く入れた方が見応えがある写真をトリミングしながら入れたり、シャッタースピードをぶらした風景を入れたり。

写真の枚数が多いので1枚1枚のサイズは小さくなっていますが、見ていてとっても楽しい作品でした。

そして、その次のページにくる新宿を象徴するような風景は、見開きでとてもインパクトがありました。

「総評と次回に向けて」

今回、エントリー作品が非常に増えたこと、そして一つのエリアから非常にたくさんの応募があったことから、このジモコレという活動が少しずつ高校写真部に定着してきているのだと思いました。高校に通っている生徒や、地元に住んでいる人が、地元のことをPRすることは、絶対に大事なことです。地元の高校に入学したり、その高校のエリアに住んでいたりする人たちには、必ず何か役割があると思います。

その町で生まれた、もしくはその高校に入ったからには、やらないといけない役割の一つとして、自分の町を自分の目で見て撮るということは、すごく面白いと思います。高校生のうちにこの企画に取り組めるというのは、自分の思い出になるわけですし、地元を好きにもなることでもあります。参加されている高校写真部の顧問の先生や生徒さん方は、この企画の良さをしっかり理解して撮ってきていただいているので、今後もとても楽しみです。

一方で気をつけたいことは、フォトブックを作るわけですので、表紙の写真はタイトルと合っていた方がいいですし、表紙の写真は地元の中で撮影してきた中で、ベスト3くらいのものを1枚使った方がいいと思います。そのなかで、どれだけいい写真があったとしても、似たような写真は何枚も使わない方がいいのではないかと思いました。

それから、人を入れていくという点では、今回の「人と歴史と四季のある町」のように、人物の写真を入れながら、地元のPRをさせたこのアイデアは非常に面白かったです。ジモトジマンをするにあたって、風景を撮るだけではなく、そこに住んでいる人を紹介することが、ポイントになると思います。次回はそういう作品が増えることを期待しています!

テラウチマサト プロフィール
写真家/プロデューサー
1954年富山県生まれ。ポートレイト、風景、プロダクトから空間まで、独自の表現手法で常に注目を集める写真家。ポートレイト作品においてはこれまで6,000人以上の著名人を撮影。2012年パリ・ユネスコ本部から招聘され、ユネスコ・イルドアクトギャラリーにて富士山写真を展示。2015年コロンビア「FOTOGRAFICA BOGOTA 2015」に招聘され講演するなど、海外からも高い評価を得ている。2016年8月には、富士山頂浅間大社奥宮にて画家Yutaka Murakamiと共に個展を開催した。
モノやコトの“隠れた本質”を捉える着眼点や斬新な表現手法に、イベントプロデュースから町興しのオファーも集まる。2014年10月より富山市政策参与に就任。2015年1月には長崎県東彼杵町アートアンバサダーに就任。