ジモトジマンコレクション

写真家・テラウチマサト氏のご講評

「今回のジモコレで集まった作品は前回以上にどれも素晴らしく、講評する作品を選ぶのが大変でした」

その地域にエネルギーがあるかどうか、地域の自慢は、最終的に『人』に行き着くと思います。

一方で『人』を撮るのはとても面倒で、難しいことです。声をかけなくてはならないし、仕事の邪魔をしてしまうかもしれない。

そういった難しさを乗り越えて作品を形にしていると感じたのが、
「刃物のまち 岐阜県関市」
「HOME TOWN ECHIZEN」
「PRETTY LIFE 『宮津』」
の3つでした。

特に「刃物のまち 岐阜県関市」は、刃物のまちという関市のブランディングに沿って、しっかりと地元の魅力を切り取っているのが素晴らしいですね。
ジモトジマンという問いに対して何を撮ればよいか、はっきりと分かった上で撮影に臨んだことが伝わりました。
まず表紙が目を引きます。見開きの表紙ですが、片方の表紙だけでも十分に伝わってくる。
また、刀工の表情や仕事ぶりを捉えるアングル、一刀両断の瞬間を捉えた一枚といい、撮影のレベルが非常に高いです。

「『人』に焦点を当てて撮影に取り組んでいるのが素晴らしい」

一方、「HOME TOWN ECHIZEN」「PRETTY LIFE 『宮津』」は、町の魅力をどう切り取るかを自分たちで考えなければならないのが、とても大変だったと思います。
その中で、『人』に焦点を当てて撮影に取り組んでいるのが素晴らしい。

「HOME TOWN ECHIZEN」は漁港や米、そしてそこで働く人といった町の魅力に焦点を当てながら、
魚のアップなど切り取り方が大胆な写真が多く、フォトジェニックでありながら1枚1枚に力強さを感じました。

「PRETTY LIFE 『宮津』」も、景色の持つ力とそこに住む人たちの表情が
とても上手く撮れており、アングルの切り取り方も素晴らしい。
繋がっていくコミュニティと、そこに在る世界観を感じさせる写真が印象的でした。

「その地に住み日々働いている、普通の人々こそが町を創っている」

場に力があるかどうかは、そこに在る物や空間、景色はもちろんですが、
やはり『人』で決まります。

その地に住み日々働いている、普通の人々こそが町を創っている。
その意味で、ジモトジマンで人に焦点を当てることは、とても重要なのではないでしょうか。

テラウチマサト プロフィール
写真家/プロデューサー
1954年富山県生まれ。ポートレイト、風景、プロダクトから空間まで、独自の表現手法で常に注目を集める写真家。ポートレイト作品においてはこれまで6,000人以上の著名人を撮影。2012年パリ・ユネスコ本部から招聘され、ユネスコ・イルドアクトギャラリーにて富士山写真を展示。2015年コロンビア「FOTOGRAFICA BOGOTA 2015」に招聘され講演するなど、海外からも高い評価を得ている。2016年8月には、富士山頂浅間大社奥宮にて画家Yutaka Murakamiと共に個展を開催した。
モノやコトの“隠れた本質”を捉える着眼点や斬新な表現手法に、イベントプロデュースから町興しのオファーも集まる。2014年10月より富山市政策参与に就任。2015年1月には長崎県東彼杵町アートアンバサダーに就任。