ジモトジマンコレクション

写真家・テラウチマサト氏のご講評

「撮り手が “被写体と対峙” する様子が伝わってきました」

各高校の生徒の皆さんが地元を紹介するガイドブックは
一つ一つが魅力的で、どれも甲乙つけがたい出来栄えでした。

どの作品も簡単に撮れるものではなかったかと思いますが、

『タドリツク タドツ』
『いちのみや さんぽ』
『オオサカ シタマチ 大正ノ』
『中区の誇り』
『藤井寺』

特にこの5作品は内容に力強さがあり、
撮り手が “被写体と対峙” する様子が伝わってきました。

タイトルのセンスにも目を引かれましたね。

「なにしろ藤井寺という町に行ってみたくなりました」

なかでもこの『藤井寺』は、一枚一枚の写真が上手いだけでなく、
なにしろ藤井寺という町に行ってみたくなりました。

表紙ではモノクロの藤井寺駅が、一枚めくるとカラーで現れるという仕掛けが面白いです。

表示板と電車の間から見える町の景色や、ホームを歩く人々の入れ方がとても上手いと思います。

「『私たちの街を撮ってくれてありがとう』と言ってくれるのではないでしょうか」

特に素晴らしいのが、この4・5ページの見開き。
「遮断機の前に立つ少女」と「横切る電車の運転士」の対比が実に情緒的です。

また、次ページからの手をつないだご夫婦の後ろ姿やアーケード街の様子、
お寺の一角からお参りする人の表情、そして街の片隅へ…
と視点が流れていく作りもよく練られていて、
藤井寺という町のイメージが身近に伝わってきました。

そして最後の見開き。
『たとえ卒業してもここに帰ってきたい。そう思わせてくれる街です。』
という言葉を添え、男性の後ろ姿と桜をフレームに収めた構成に唸らされました。

私は藤井寺という街をしっかり歩いたことはありませんが、
藤井寺に住む人がこのガイドブックを手に取ったら

「私たちの街を撮ってくれてありがとう」

と言ってくれるのではないでしょうか。

テラウチマサト プロフィール
写真家/プロデューサー
1954年富山県生まれ。ポートレイト、風景、プロダクトから空間まで、独自の表現手法で常に注目を集める写真家。ポートレイト作品においてはこれまで6,000人以上の著名人を撮影。2012年パリ・ユネスコ本部から招聘され、ユネスコ・イルドアクトギャラリーにて富士山写真を展示。2015年コロンビア「FOTOGRAFICA BOGOTA 2015」に招聘され講演するなど、海外からも高い評価を得ている。2016年8月には、富士山頂浅間大社奥宮にて画家Yutaka Murakamiと共に個展を開催した。
モノやコトの“隠れた本質”を捉える着眼点や斬新な表現手法に、イベントプロデュースから町興しのオファーも集まる。2014年10月より富山市政策参与に就任。2015年1月には長崎県東彼杵町アートアンバサダーに就任。